ZOKE.NET HOME PAGE
校友会員ウェブギャラリー
 
■前田 中 「僕は人という前田 中」
 第28期 デザイン II 卒業
■Gallery TOP

■Friends Gallery

■留学生 Report



   

   

木の股から生まれて・・・
 ハッキリ言って僕は、言葉遣いというものをよく知らないし、小難しいことを並べ立てるほどお利口でもないので、とっても分かりやすい文章しか書けない。そのへんはよろしく。
 僕の父は、質実剛健を旨とし、世界中を飛び回っていた希代の商売人。母は、繊細な芸術家に憧れ、いつまでもホノボノとした夢を観ている草食動物・・・この相反する二本の木の股から生まれた僕という矛盾は「立派な実業家として成功を勝ち取」らなくてはならないし「浮き世離れした芸術家として幸せな生涯を送」らなくてはならない。外道の僕は、どういう答えを出さなきゃならないんだろう・・・
 どうでもいいや、まあ、暇つぶしにでも聞いて。

 

 
 
 

◆あぶく銭・・・
 大学をギリギリの単位で卒業した結果、もともと就職活動なんかに興味のカケラもない僕は、なんの仕事もせずに本を読んだり将棋を指して暮らしていた。間違えて面接を受けてしまい、エロ本出版社の編集職に採用されたこともあったけど、出勤初日の朝、ネクタイの絞め方が分からず、なんだか面倒臭くなって出社を諦めちゃった・・・
 2年ぐらいそんな生活をしていると、どんな怠け者でも暇でしょうがなくなるんだよね・・・あんまり暇なんで、なんだかひとつ面白いことをしてみようと思い、手元にあった貯金をはたいて株を買ってみた。父に幼少から仕込まれていたこともあって、シュミレーションなどをして遊んだことはあったけど、実弾を投入するのは初めての経験。一部上場企業が軒並み100円を下回る最悪の市場ではあったけど、結果は良好。決算期にかけて上昇している相場を短期で利食いし、投資金額の倍以上を運良く回収できた。
 さて、この利益をさらに投資するべきなのか、それとも何か別の方向に遣うべきなのか・・・悩んだ挙げ句、僕はその資金を「遊んで暮らす」ために遣おうと決心した。コンセプトは・・・安いワンルームを借りて、そこで金が尽きるまでひたすらダラダラと無目的に怠ける・・・という、とても分かりやすいもの。思い立ったが吉日、とばかりに、それから数日後には八王子の山奥へと移住した。無職の人間は通常、家なんか貸してもらえないけど、そこは舌先三寸でどうにでもできるのが世間の隙間と甘さ。さてさて、怠け者の外道生活始まり始まり・・・

◆外道の創作・・・
 さて、一人暮らしを始めてはみたものの、毎日何もせず食っては寝るばかり・・・暇でしょうがないので「キャトルミューティレーター前田」というペンネームであまりにもエグいSM小説やB級ネタなどを投稿してたけど、しばらくして自分がそれほど性欲に満ちているキャラクターでもないということに気付き、安過ぎる原稿料や長過ぎるペンネームという編集者からの苦情などで面倒臭くなり、疲れてやめた。そしてまた始まる暇な生活・・・
 しょうがないので、在学中の目標でもあった彫刻というやつでも始めてみようかと、木を拾ってきて、しきりにコリコリしてみた。なんだか彫刻家って、女の子にモテそうな肩書きに違いない・・・!などという大きな勘違いを胸に秘めつつ、ひたすら制作を続けること2ヶ月ばかり、なんとなく良い物が出来上がったので、その道の巨匠に「とても良い物があるので観て欲しい」と持ち寄ったところ・・・一目見ただけで「教える事がないから、明日から作家になりなさい」とのこと。というわけで、なんとなく作家になっちゃった。

◆まったり出世・・・
 結局、なんだかんだで2つの会に所属するハメになり、上野の美術館で展覧会とか百貨店なんかで企画展に出したりしているうちに、大坂府知事とか文部大臣から賞をもらった。府知事賞のほうは、ギリギリでノック知事からもらうことができず、ちょっと残念・・・昨年はちょうどテロの真っ最中に、アメリカでボストン美術館の所蔵品と共に僕の物が展示された。今年の8〜9月には、松本市美術館という所で展示されるので、暇で暇でしょうがない人は観てね。って言っても、この会報誌が出る頃には、とっくに終わってるんだろうけど。来期には、人柄が認められたのか、はたまたなんとなく籤引きで選ばれたのか、会の幹部として理事に就任することとなる。まあ、作家仲間のほとんどからすれば孫のような年齢差の青二才だけど、なんとかなるのかな・・・

◆参考にならない話・・・
 とりあえず、物造りに関して、言いたいことだけ言わせてもらう。白い物は黒くないという程度の、とっても低レベルな話題。
・自分に視える所は、他人も絶対に気付く。
  でも、黙ってる。鏡と同じ。
・仕事は、入れ込むほど損をする。
  でも、それがイヤなら物造りなんかするな。
・相手は動く。だから、固定しちゃダメ。
  追いかけてゆっくりと固める。
・努力や実力で成し得ない所は、神様の力を借りる。
  いわゆる運や適当というものは、こういう場面。

◆堕としたものは飛ぶ鳥ぐらい・・・
 そんなこんなで、なんだか忙しくなってきたかと思ったら、今度も訳の分からない縁で、とある病院の理事長を勤めるハメになって大忙し・・・今度は、経営者として経理や税務なんかを担当しなきゃならない立場なんだけど、ハッキリ言ってこっちの方が分かりやすくて気分的に楽。美術なんていう実体の不可解なサービス業ほど、難しいものはないよ。でも、僕はそんな曖昧模糊なものがとても好きだし、そういう遊び心もないような手合いとは、同じ空気を吸う気すら起きない。
 これからの僕がどんな方向に行っちゃうのか、僕自身が一番よく分かってないけど、どうでもいいような気がする。どこで何をしようが、僕は自分にできる最高の仕事をすればいいだけだし、選択肢が無数にあれば、その中で一番スルッと通っている手を指せばいいだけ。経営なんてデザインと同じだし、デッサンが狂わなければ、人を観る目も曇らない。
 目をつぶって走り抜ける過程で、この世界に、何かポロポロと気持ちのいいカケラを落とし続けてゆけるのなら、最後の最後まで、僕は、人として物を造る人間。

僕の物の簡潔すぎる紹介・・・
 根付という物だけど、知っている人はあまりいないと思う。携帯ストラップみたいな物。大きさはだいたい3〜4cmぐらいの小さな彫刻。興味のある人は、自分で調べてね。けっこう面白いよ

*画像をクリックすると
 詳細ウインドが開きます。

   
   
       

Copyright©2005-2008,ZOKEI FRIENDS OFFICE. All rights reserved.