■僕なりにアニメーションの表現を追求した結果〜数々の受賞について
今回の一連の受賞は、僕なりにアニメーションで出来ることは何かと追求したことを評価してもらったのだと思う。最新作の「頭山」では、自分の力を出しきった。それが、世界のアニメーションのレベルで高く評価されて、とても嬉しい。でも、取材が多くて、作品をつくる時間がなかなかとれない・・。
日本で短編アニメーションの評価する機会といえば、広島の国際アニメーションフェスティバルがあるけれど、あまり一般的に知られていない。まだまだ海外で認められてから初めて日本で評価されるという逆輸入的な評価だ。日本でもきっちりと評価する機会があればいいと思う。また、こういう短編アニメーションは興業にかかることも少なく、たまにテレビでポツンと放映される位で、一般の人の認知が低い。でもここ数年は、DVDの普及もあり、いろいろな作品がリリースされてきている。もっと高まってくればいいと思う。
■美術とデザインの間で〜大学在学中
現在、造形大学ではアニメーションの専攻を準備し始めているようだけど、もちろん僕の頃にはデザイン科の中に映像があっただけ。映像をやる人は普通はデザイン科に入ったようだ。僕みたいに絵画からアニメーションを目指すというプロセスは珍しいのかもしれない。でも、絵を勉強していく中で、その絵を動かそうと自然にアニメーションに入っていくことだってある。僕は大学に入学する前からアニメーションをつくっていたこともあるけれど、美術という発想の中からアニメーションが出てきたと思う。それに、入学して東京に出てきて、地方では観ることができないアニメーションをいろいろ観たこともとても刺激になった。そうして徐々に絵画の表現よりアニメーションにシフトしていった。
在学中は映像のスタジオによく忍び込んでいた。映像史や映画理論といった講義は美術の学生も受けることはできるけれど、実習は受けられないからね。卒業制作もアニメーションで。絵画の先生では評価できないので、デザインの中川先生に指導してもらった。
今でも絵画とか彫刻の専攻でアニメーションをやりたい学生は、もぐりで忍び込んでいるらしい。広告表現や映像表現とかいう中でアニメーションがあるけど、美術の中にもアニメーションというカテゴリーがあってもいいような気がする。デザインというカテゴリーにはまらなくてもいいと思う(大学教育にとやかく口を出すつもりはないけれど)。でも、在学中、友人達の間ではデザイン・美術は特に気にしなかったな。絵を描いている人はちょっと汚い。でもデザインの人はこじゃれた感じという見かけの違いくらいだった(笑)。
■スタイルを固めることばかり追わないで〜若手の方々へ
僕もそうだったけれど、在学中は何かを表現したい、何か形にしたいと模索している時期。中には、早く作家やデザイナーにならなくてはと焦ってしまう人もいる。そして、慌てて個展をやったりと、スタイルばかりにとらわれてしまう。追求しているものが見つかるのはその人によって時期が違う。だから、大学四年間できっちりと形になって、デザイナーになったり、画家になれるというわけではない。それよりは、今、自分はどこまで出来ているのか、そして、自分のやるべきことを探すことが大切だと思う。卒業後、すぐにでなくてもいい。就職してから、在学中とはちがった何か別のものが見つかることだってある。必ずしも作家やデザイナーになるだけではないはずだ。とにかく、今の自分と真剣に向き合っていてほしいね。 |