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辻 直之 「カンヌ映画祭に参加して」 26期生 美術学科2類塑像コース卒業  
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 今年五月のカンヌ国際映画祭監督週間で、新作「3つの雲」が上映された。監督週間のポスター等のイラスト、デザインも担当した。普段いわゆる映画界とあまり接点のない私はこの映画祭に行くと未知なる商業映画の世界と出会う。監督週間は、若い監督の作品や、まだ名前が知られていない監督の映画をよく取り上げる。あまりヒットしそうもない映画でも、上映する。バラエティーは豊かで、ドキュメンタリーから、アクションコメディー、ちびりそうになるほど怖いホラーまでやっていた。私や同じく造形大の大学院生の大山慶さんの作品は「オルタナティブ プログラム」で上映されたがこれはいわゆる実験映画などを上映する、監督週間全体から見ても、ある種「きわもの」的プログラムだ。いやそう言うときこえが悪い。この言葉には「未来の…」など積極的な意味合いがあるらしい。
 五月の南仏、カンヌは暑い。昼は夏のようだが、夜は冷える。気温の変化が激しい。南仏というと、のんびりとしたリゾート地の印象があるかも知れなが、私はそういうカンヌは知らない。映画関係者がごったがえし、ごみごみしている。人々は早足で歩き、せわしなく早口でしゃべり、携帯電話で様々に約束をとりつける。私はここにいると、わけもわからず、テンションが上がって行き、気がつくと興奮しきった後で、ぐったりしている。理由はいくつかある。まず、面白そうな映画をたくさんやっているから。スターや大監督が来るからだ。そして、自分の映画を宣伝するチャンスだから。それでいて、二年とも映画祭の印象はあまり変わらない。規模が大きく、歴史もあるせいなのか「まるで去年に戻ってしまった」かのような印象を受けた。ただ、街や上映会場には、私の描いたイラストがあちこちにあり、明らかにそれは今年らしいことなのだが、それはそれでまた別の妄想の中にいるような感覚だった。
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 私の「3つの雲」は十三分のアニメ映画で、雲に関する短い三つの短編オムニバスだ。特に2番目の作品「雲を見ていたら」は子供たちに向けて親しみを込めたメッセージを持っている作品だが、このおかげか十歳から十五歳の批評家の卵たちが映画祭すべての作品から選んだ十五本のうちに選ばれ、追加上映された。偶然ジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワー」との同時上映だった。中学生の頃親友が教えてくれたジャームッシュの映画。「お前たちにも映画はつくれるんだぞ」と言っているかのようだった。そして十数年後、並べて上映され、私は有頂天だった。
 映画祭では映画に関わる様々な人と出会うことができる。映画祭期間中、夜は複数の場所でパーティーをやっている。面白そうな人が来そうか、いい音楽がかかるか、などを気にしながらどこに行くかを決める。自分ではわからないので教えてもらうのだが、ここで映画や映像に関わる様々な人と出会える。国際映画祭で面白いのは、映画の話をするのが好きな人がさすがに多いので、今日見た映画や、過去の映画で、どんなものが好きかなどについて話をすることができる。映画は世界に共通する記憶のように感じられる。初めて知り合う者同士なのに、共通の記憶を持っているかのような感覚。
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学生時代について
 私はいまだにひねくれ者だが、学生時代は今よりもっと、かりかりしていた。彫刻のコースにいた私だったが、アニメの木船徳光先生は受講資格のない私にも、熱心に指導してくださった。学校には行っていたが、カリキュラムよりむしろ「自分の作品」と呼べるものを作ることに夢中だった。今思うと、受講そっちのけだったので、もったいないことをしたとも思うが、私は焦っていたのだ。友達と、展覧会をしたり、ミニコミ雑誌を作ったりしていた。今でも付き合いがある人も多い。
 映像ではかわなかのぶひろ先生、波多野哲朗先生、太田曜先生、現在講師の宮崎淳先生には今も、いろいろとお世話になっている。彫刻では小川幸造先生、三木俊晴先生、船越桂先生に、お世話になった。年齢にとらわれずに「作品を作る者同士」として接してくださる。技術センターの大嶋宏治さんにもテクニカルな面をいつも優しく教えて頂いた。一般教養でお世話になった越村勲先生には今、クロアチアのアニメのことを教えていただいている。
 
最後に学生さんたちに
 アニメ、絵描きなどはろくでなしのすることだという気持ちがある。私の場合、特に、人の手本になるような生き方はしてこなかった。以下は読み流して欲しい。自分の意思で行動することが、まず大切だと思う。自分で選んで、まず一歩踏み出す。私の場合は失敗を繰り返してやっているが、それでも、自分で始めたことなら自分で尻拭いしようとするようになる(できているかはともかく…)。


■辻 直之 
実験アニメクリエイター

幼いころからマンガ、アニメーションを愛する。10代の後半に美術、映画に出会う。6本の短編アニメを制作している。うち3本が、木炭画のアニメ。他にイラスト、野外インスタレーション(スクラップ祭り1〜4:寺上匠との合作)など。実験的映画、映像を地域に紹介する定期上映会「ペペ馬場キネマ劇場」メンバー。04年、05年カンヌ国際映画祭ほか、国内外の映画祭、美術館、ギャラリーなどで作品を発表。

DVD「3つの雲」辻直之ダークサイドアニメーション
5作品と特典映像を収録、11月末コロムビアミュージックエンタテイメントより発売予定\2940(税込み)

7人の実験アニメクリエイターのコンピレーションDVD「シンキン
グアンドドローイング」に「闇を見つめる羽根」が収録されています。
造形大大学院生の大山慶さんの作品も収録されています。
ダゲレオ出版より\3990(税込み)で発売中。

 

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