Good designなものを日常に。生活者の視点に立ったモノ作りを目指して
『モノ買うことは結婚することと同じこと。だから飽きたから捨てるようなことはしたくない』と語る倉方雅行氏の活動の場は広い。
IDデザインの他、自身がクライアントとなり企画・デザイン・販売まで行うオリジナルプロダクト展開、展覧会の企画、Gマークをはじめ数々のデザイン賞の審査員、そして講演や講師業...と多岐にわたる。それら全ての活動の根底には『生活が豊かになるモノ。使い手が“わくわく感”を感じられるモノ。そんなgood designなモノを日常に取り入れて欲しい』という思いがある。
造形大学初の早稲田実業卒業生
早実から美大進学という造形大の面接官も驚いた進路を決意したのは、高校でマーケティングを勉強して『大量消費・使い捨ての時代の後は、これからの日本にとって「デザインの力」が必要になる』と思ったからだ。倉方氏のデザインとビジネスをつなげるマネージメント力は早実で培われたようだ。
欧米15ヶ国、45都市へ遊学
造形大学卒行後、自動車会社や個人事務所でキャリアを重ねるも『外から日本をみてみたい』と遊学を決めた。造形大学で知合ったグラフィックデザイナーの奥様と共に、英会話から資金調達まで3年間の準備期間を経て、ちょうど30歳になる年に出発した。旅の中でペンタグラムなどのデザイン事務所やカイ・フランク氏など個人デザイナーを訪ねてあるいた。Eメールもない時代、手紙と電話でアポをとり、あとは現地での紹介を頼りにしての訪問だったが、皆があたたかく迎えてくれた。そんな彼らに、旅の途中で満足なお礼ができないことを伝えると、皆一様に『いつかキミを頼ってきた人に、それを返してあげてほしい』といわれた。今、学生やクライアント、社会貢献に誠意をつくすことで、あの旅で出会った人々へお礼をしている気持ちでいる。
オリジナルプロダクト作り
帰国後はIDデザインの他にオリジナルプロダクト作りを開始した。デザイナーよがりの美しいだけの商品ではなく、生活者の視点に立ってつくられた商品を作るべく、デザイナー・ビジネスマン両方になって作ったキャドルホルダーなどは、今でもコンランショップやAXISなどでロングセラーとなっている。
そんなオリジナルプロダクトも10アイテムを越えた。それらは商品の美しさや機能面での評価だけでなく、デザイナー自身が取り組む商品開発と販売実践という面でも注目を集め、雑誌や新聞や教科書などで紹介されている。
倉方氏の最新作である家庭用タップ「PLUGO-プラゴ-」は、2005年産業交流展内の「東京デザインマーケット」(都内のデザイナーとモノづくりをする中小企業を結んで、新たな産業を生むための場)での出合いで、2006年に設立した「monosモノス」から冬に、monosオリジナル商品第1号として発売される。隠す存在であった家庭用タップが、デザインの力で日常生活に彩りをそえてくれる愛しいモノに変身をとげたのだ。それは長い間一緒に生活を共にする、きっと善き伴侶となっていくことだろう。 |