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前田あさぎ 31期 美術学科美術II類専攻 卒業
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 在学中は石を彫っていた。石場で粉じんにまみれながら、2m四方の巨大な卒業制作。
 今、ジュエリーを制作していて、どちらかと言うと物が小さくなったというよりは、自分が小人になってジュエリーをモニュメントぐらいに感じながら、制作している。その視点はひょっとしたら石彫をしていて養われたものかもしれない。

 だから小人が登場する、ストーリー付きのブレスレットのシリーズは続く。
 絵本のように1パーツごとに話が裏に刻まれていて、6〜7パーツで話が完結する。

 初めてアメリカでアートジュエリー専門のギャラリーに売り込みに行った時、まず気に入られたのも、このシリーズだった。
 憧れのボストンにあるモビリアギャラリーに電話でアポを取り、作品をゴロゴロに入れ、ニューヨークとボストンのチャイナタウンを往復する格安バスに乗り込み、ギャラリーを訪ねた。オーナーは、作品を全て台の上に並べさせ、その場であっという間に数点のジュエリーを選びだし、「今日、置いていける?」と聞いてきた。驚いてしまったのはこちらの方で、喜ぶ暇もなく契約書にサインをして、契約成立。
 契約してから、「ところであなた、ジュエリーはどこで習ったの?」という具合。気に入ったら、どこの誰か、経歴も何も知らなくても即決。アメリカの素晴らしさである。
 それから3年半。お話のブレスレットと同様に、作り続けているのはエナメル(七宝焼)を使ったジュエリー。FIT時代、授業のプログラムには無かったエナメルで試しに実験していた作品を「面白い」とオーナーが判断したからだ。
 あさぎはエナメルが面白いのだから!とおだてられているうちに、どんどんエナメル作品が増えていた。誉めて誉めてアーティストを育てるのもアメリカらしい。手紙にはいつも、「あなたの才能に感謝するわ」と書かれていて、「何でも好きな物を作ればいいのよ」と言ってくれる。何を作ってもブラボーと抱き締めてくれ、売り上げの小切手は色とりどりの羽と共に送られてくる。パンパカパーン♪という様に。そんな遊び心も忘れない、何とも頼もしい味方である。

 最初の頃は、ただストイックに作品を作り続けていて、夜中も朝も生活も何もなかった。一喜一憂し、激しい感情の中で制作するのがアーティストだと完全に誤解していた。
 今は楽しんでこそのアート。ゆったりした気持ちで丁寧に取り組む。「心」はどこまでも届くから、「心ある作品」を、生み出したいと思う。


前田あさぎ
2000年 東京造形大学彫刻科卒業後、ニューヨークに留学。
2001年 G.I.A (Gemological Institute of America − 宝石鑑定専門学校)より、GG (Graduate Gemologist − GIA宝石学修了証書)を取得。
2002年 F.I.T (Fashion Institute of Technology)ジュエリー科卒業後、バンクーバーへ。宝石鑑定をしながら、ジュエリー制作、ファッションショーイベントの企画、開催。
2003年 日本帰国と同時期に、モビリアギャラリー(ボストン)と契約。
2004年〜毎年ニューヨークとシカゴで開かれる、彫刻、オブジェ、機能的アート展SOFA (Sculpture Objects & Functional Art )を中心に、モビリアギャラリーで作品を発表。日本では、ギャラリーや百貨店での展示。その他、東京とパリのブティックでジュエリーのコレクションを展開。
2007年 女子美術大学にて非常勤講師として短期授業を受け持つ。11月に都内で個展予定。
詳細は、 www.asagimaeda.com まで。


<前田あさぎ>

 





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