人が手をつかってものをつくることを大事にしたい
ーー略歴を拝見すると国内外問わず精力的に活動されていますね。
ん〜。学生を相手にしてますでしょ。口で(言葉で)いってすませて
しまいがちですけど、こちらもちゃんと手を動かしてその上で接したいから。
大学で教えるということは教育者である前に研究者であるべきで、そのためには制作
を続ける事が大事。そのことにより教える内容も進化します。
「行きたい!知りたい!勉強したい!」念じていると道が開けてくる
ーー約30年間かけて3つの大学を卒業されていますね。
それも約10年おきにね。
ーーまず立教大学を卒業された後東京造形大学へ入学され、その後クランブルック・アカデミー・オブ・アート(大学院大学/アメリカ)へ入学された経緯をおきかせ下さい。
中学高校は女子美附属でしたが英語が好きで英米文学科への進学を選びました。建築士であった父は美術へ進んでほしかったみたいだけど・・・普通と逆よね。 でも大学卒業後に「やっぱり美術をしたい」と思っていた頃にその父が病気になり他界。そのことがきっかけで「生きる証として織物を制作していこう」と一念発起して受験をしました。
ーーご結婚されていたんですよね。
そう。主人の両親とも同居していました。予備校にも行きましたが、当時は社会人入学は珍しくて「主婦が何で大学に来るんだよ!」って男子学生にからまれたりしました。
ーーそして3つめの大学は東京造形大学卒業後、すでに日展などで活躍されていて、
他大学でも教えられているなかで留学を決断されたこととなりますが。
その年で留学をするというのは自分をこわして次に進むということです。こわかったけど、
作品って何だろう? 表現って何だろう? もっと知りたい! って。好奇心の方が強かったですね。でも家庭もあると躊躇もしましたが日展に出品していた頃から応援して下さっていた設計事務所の社長さんが作品と交換に1年分の学費を払って下さり留学することができました。
3年あれば、言葉を覚えて、材料集めて、制作して、展覧会できる。
ーークランブルックを卒業後ブラジルへいかれたきっかけは何ですか。
夫がブラジル転勤になったので今度はついていかなきゃと思い行きました。
ーー海外での制作はどのようにされるのですか。
その時は120cm幅の織機だけをもっていきましたが、ブラジルはポルトガル語でしょ….。
材料ひとつ揃えるのにも勝手がちがいました。ある時青空市場にいったら「サイザル(作品につかう素材)」を使った民芸品があったので取り扱っている店の住所をきいてそこに行き、材料を購入して制作したりしました。そうこうしているうちにたまたま持っていたポートフォリオがきっかけでサンパウロ・近代美術館で個展をすることになったのです。
アートの根源は祭儀にある
ーー作品は留学前、留学中、帰国後と変化されていますね。
渡米前のテーマは「ハレとケ」の「ハレ」(作品写真1)そのテーマを深め「アートの根源は祭儀にある」ということにたどりついたのが留学時代。
クランブルックの卒業制作は1年の夏休みにアンデスをトレッキングし、テント生活をしながら村々を訪ね、土地の織物を調べたことがありましたが、その体験からうまれた作品です。(作品写真2)帰国後は海外で材料集めに苦労したことがきっかけで、私の身近にある素材を使おうと母の反古紙(ほごし)を用いたシリーズへ移行しました。
ーー(作品写真4)は写真を織っているのですか
これはコンピュータージャガード織です。
南米旅行の写真と日記を織りたくて1999年からほぼ隔年カナダへいき
コンピュータージャガードのワークショップに参加しました。
ーー当時は日本にいらしたのですか。
はい。1991年から東京造形大学で教え始めていましたので、夏休みなど利用してカナダへ6回いきました。
今、造形大学のテキスタイル専攻に活気が出て来たことがうれしい。
ーー東京造形大学のテキスタイルといえばZOB展を忘れてはいけないですね。
ZOB展はテキスタイルの卒業生有志に在校生の一部も参加して行われる展覧会です。
校友会の協賛もいただき昨年30回目の展覧会を開催しました。
ーー創立40周年の東京造形大学(1966年開学)において30回目のZOB展とは、大学の歴史の一部ですね。
守らなきゃ!って思って頑張ってきました。
ーーそして東京造形大学の専任教員を2007年3月で退職されますが、
今後の活動はどのようなことを考えていらっしゃいますか。
日本ではあまり紹介されていないバウハウステキスタイルの研究を進めたいですね。今、洋書を読み始めています。
ーー今後の活動も楽しみにしております。今日はありがとうございました。
中野先生は取材の二日後には退職記念展の作品制作の為カナダへ出発されました。
にこやかな口調とパワフルな行動力で
沢山の学生をご指導くださり、また校友会常務理事として
力になって下さった事に感謝します。これからのさらなるご活躍を楽しみにしています。
中野恵美子退職記念展
会期 2007年6月12日(火)〜23日(土)
[日曜休館] 10:30 〜 17:00
会場 東京造形大学付属横山記念マンズー美術館
192-0992 東京都八王子市宇津貫町1556
問合せ tel:042-637-8111(代)
fax:042-637-8743
交通アクセス
JR横浜線「相原」駅よりスクールバス(無料)で5分
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<中野恵美子>
立教大学文学部英米文学科卒業
東京造形大学卒業
クランブルック・アカデミー・オブ・アート大学院修士課程修了






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