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永井雅人 35期 美術学科絵画専攻
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 私の造形大学での絵画専攻学部生としての4年間は常に失敗と挫折の連続だった。当時、絵画専攻の学生は2年生の時に3つのコースから自分が進むコースを選択することになっていた。私は迷うことなく版表現コースに進んだ。絵画専攻に入学した当時、私は推薦制度による数少ない現役入学の学生だった。そのために絵画制作以前にその基礎となるデッサンと油彩のテクニック、実技の経験が絶対的に不足していた。従って私が版表現コースを選んだのは、版画技法の習得なら全員が一からのスタートであるからこれまでの遅れを取り戻せるだろう、という理由からだった。リトグラフにしても、シルクスクリーンやエッチングといった技法にしても、一通り習得すれば、自分の腕の未熟さをカバーしてくれる技になるだろう、と思ったのである。
 しかし版画の世界はそう甘くはなかった。私は、版画を学ぶ全国の学生たちがある意味で卒業制作展以上に重要と考えている全国大学版画展で、大きな失敗をしてしまった。その時私が頑張って作った作品は、それ一点で見た時にはそれなりに見えたのだが、他の人の作品と並べてみた時には、引き立たず、埋没してしまうのだった。出品した同級生の作品が次々と買い上げ賞を受賞して行く中で、私の作品が選ばれることは遂になかった。
 しかし今になって思うと、もし造形大学在学中に私の創作が思うように進み、作品が今よりも高い評価を得ていたとしたら、その後の自分の作家としての歩みはなかっただろう。学部を卒業後、私は造形大学より伝統的な版画制作を求める多摩美大の大学院に進み、版画制作の技法を一から見直す必要に迫られた。そして私はモノクロームの銅版画作品の中に、自分が制作を続けて行く可能性を見つけたのだった。
 今は作品発表の中心は主に海外である。これまでにメルボルンとニューヨークのアーティスト・イン・レジデンスに滞在し、制作と展覧会を行った。海外での方が作品制作に集中することが出来る上に、展覧会経費もギャラリー側が負担してくれるというのが、私にとって大変なメリットである。また海外の方が私の作品に対する注目度も高いように感じる。特にニューヨークのレジデンスで制作出来るというのは、世界的に見てもほんの一握りの作家にしか与えられない名誉と幸運であったと思う。
 この9月からは欧州のオーストリアに制作と展覧会のために滞在する。文化都市グラーツに現地の州政府からの招待でスタジオと住まいが4カ月与えられる。最終的な展覧会はこの特別スタジオ内で、私のレジデンス滞在成果を発表する形で企画されることになっている。これまでヨーロッパでの発表は、国際版画コンクールの展覧会に参加することしかなかったので、現地で制作して行う展覧会をとても楽しみにしている。グラーツ滞在の後は、オランダのアムステルダムの版画工房で制作予定である。現代美術家たちが一番住みたい都市と言っている アムステルダムを、造形大学3年時に交換留学して以来、訪ねることが出来るのも嬉しいことである。


<永井雅人>







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