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羽田桜 40期 美術学科彫刻専攻
hochschule fur bildende kunste/ドイツ
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 2011年10月、Hochschule fur bildende Kunste Hamburg (ハンブルク造形美術大学)Lene Marksenクラスでのドイツでの学生生活がスタートしました。クラスでは週に一回の集まりで個々の作品を発表したり、それについて話しあったり、展示を見に行ったりします。この学校では入学試験がポートフォリオ提出のみ(例外で面接も有)というユニークな方法で、個々のポートフォリオを見るとその人がどんな作家が好きなのか、影響を受けているのか、何に興味を持っているのかが見えて面白かった。技術よりも、なぜ作ったのかに重きを置いて、教授は指導すると言うよりは作品を通して共にコミュニケーションしながら考えや表現を深めていきます。また教授も生徒と同じように作品のプレゼンテーションをし、皆で話し合ったり時に批評したりするのが最初は驚きでした。


 まず自分のプロジェクトを立てそれを各スタジオに行きLeiterと呼ばれる技術者と相談しながら技術を学んだり制作を進めていく。みんなで行うようなデッサンや塑像の授業は無く、まずアイデアがあって、素材を選びその次にテクニックがあり必要ならば工房でその技術を学ぶことができるというスタンスは、造形大学でのまず技術の向上があり、そこからアイデアに生かしていくというそれとは真逆で面白い。良く言えば自由で、技術による枠組みを最初から限定しない。しかし技術を学びたい、なにをしたいかまだ定まらない学生にとっては困難なように思えた。Leiterはさらに良くするための技術や素材の提供、提案など熱心で、毎日コミュニケーションしながら作品を作り上げるのは色々な意味で勉強になった。


 外国語。その国の文法、言葉はその国の思考の仕方や性格までもが反映されているような気がする。ドイツ語を勉強することで母語を見つめ直すことができた。日本語では恥ずかしくて言えないようなこともドイツ語だと堂々と言える、という不思議な体験もありました。母国にいる時よりも日本人であることを強く意識するし、より自分が日本人になった気がします。

 私はベルリンで見たGerd&Uwe Tobias というルーマニアの作家の巨大でカラフルな木版画に興味を引かれ印刷(グラフィック)のテクニックを使った平面作品のプロジェクトを始めました。日本にも高い技術と伝統を持つ色彩豊かな木版画の歴史がありますが、それとはまた違った西洋の印刷テクニックを学び比較するのも面白かった。
 版画というのは線の芸術であり、日本は特に漫画や日本画など昔からものを線で捉えるということに長け表現を深めてきました。出来上がった絵を見ると意識していなかった自分の中のそういった影響を発見することが出来たり、逆に指摘されることもありました。


 4月にはJenischHausというミュージアムで、教授とクラスメイトとの『風景』をテーマにした展示のプロジェクトに参加する機会に恵まれ、180×192cmの版画作品を展示しました。去年の3月の震災の時私はすでにドイツに滞在していましたがその後みえる世界の風景は以前とはまったく違うものになりました。日本の人がほとんど味わったであろう絶望感や無力感、深い悲しみや恐怖、怒りの中で、人間の実際的な生活の中ではまったくと言っていいほど”無意味”な”アート”という行為を学ぶ/することについて再び考え直さなければならないと感じました。

 日本で発表する時も緊張しますが、外国で自分の作品をみせる、というのはとても良い経験だと思います。
 このような機会に恵まれたことに感謝して精力的に制作を続けていきたいと思います。

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